【摩利支天峰】中央壁独標~ジェードルルート

スズキです。

摩利支天峰の独標、ジェードルルートに行ってきました。

<メンバー>
Tロー(杉並労山)(L)
スズキ

<日程>
2015年9月4日(金)~6日(日)

・9/4(金)
8:20 芦安
9:50 北沢峠
10:40 水仙峠
11:20 大武川2050m付近

・9/5(土)
3:00 起床
4:00 出発
5:50 取付
6:30 登坂開始
14:00 終了点
15:00 摩利支天峰
17:30 北沢峠

・9/6(日)
北沢峠 → 芦安 → 帰京

 

 

今回はマジでやばかった。

 

「無事に帰れるのか?」

 

「何としても帰らないと…」

 

なんてことを何度も考えた。無事に帰ってこれてホントに良かった。
摩利支天峰の独標~ジェードルルート。今はまるで登られていないであろうルートだが、それにしても昔の人はよくこんなところを登ったものである。ボロボロの花崗岩、悪い草付き、至る所から染み出しているそのルートは完全に忘れさられたルートで、インターネットで検索しても昔の記録しか出てこない。
Tロー君はこの夏3回目の摩利支天で1回目は偵察、2回目は時間切れ敗退、3度目の正直で完登することができた。自分は今回フォローでTロー君に着いていっただけだが、それにしても貴重な体験であった。自分は全く歯が立たず、おおよそクライミングと呼べるようなものではなかったが、これもまたクライミングなのだ。どのような手を使ってでも登る。今回はそんなクライミングを体験することができた。

 

ちなみに、何でこんなところに行ったかというと、最近誰も登っていないからである。クライミングの魅力の1つに、誰も登っていないところを登る、というのがあると思う。ただ、今時誰も登っていないところなんてないだろうから、実際は記録がほとんど残っていないとか、10年くらい登られていないとか、そんなところを探して登ることになる。もちろん人気ルートも楽しいけど、そういったルートは登れて当たり前だし、情報が多すぎるのも面白くない。摩利支天は最近の記録もないし情報もほとんど出ていない。これを登ればそりゃー価値は高いだろう。なんて偉そうなことを言っているが、自分はフォローなので残念ながらたいした価値はなかったりする…

 

■9/4(金) 曇り時々小雨
今回は金曜にアプローチ、土曜に登攀→帰宅、日曜は予備日の計画である。日曜は天気が崩れるようだが、土曜は晴れ予報となっている。日曜を予備日としているのは土曜の最終バスに間に合わなかった場合を想定したものであり、登攀は土曜に終える予定となっている。ピッチ数も多くはないし、正直余裕だと思っていたが甘かった。結局日曜日に帰宅することになった。
朝6時にピックアップして芦安に向かう。バスを乗り継ぎ北沢峠まで行く。仙水峠までは登山道を歩いて、そこから大武川まで下って行った。

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仙水峠から見た摩利支天峰

 

下りはなるべく左に行きつつですぐに大武川まで出ることができた。アプローチは1時間半。正直こんなに楽だとは思わなかった。今日はここでビバークして、翌日アタックとなる。着いたとたん小雨が降り始めたが、すぐに止んでくれた。時間はたっぷりあるのでのんびり過ごしながら翌日の準備に備えた。

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大武川に向かって下降していくと


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こんなところに出て

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少し登ると快適な場所が…

 

■9/5(土) 晴れ
3時に起床。4時に出発。大武川を少し上がり南西稜の左を上がっていく。しばらく登ったら南西稜に出て中央壁に向けて右に出ていく。南西稜を行き過ぎると懸垂支点があるところに出てしまうが、それは行き過ぎ。少し戻って右に出ると簡単に中央壁基部に出れる。中央壁基部の白い砂場?を登っていけば独標ルートの取付である。

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中央壁

ここまで約2時間弱。準備をして6時半に登攀を開始した。今回の登攀は継続なので、リードが空身で、フォローが荷揚げ担当となる。つまりは自分が荷揚げ担当となったのだが、これがきつかった。簡単なルートなら大丈夫なのだろうが、これだけ厳しいルートで荷が重いともうまるでダメ。全然クライミングにならなかった。まあ、空身でもクライミングになったか疑問ではあるが…

 
◆独標ルート1P 30m Ⅳ A1 フォロー
独標ルートの1P目はⅣ級 A1という厳しいグレード。最初の凹角が濡れていて難しい。荷物が重いので凹角からバンドに出るところがかなりきつい。テンテンになりながらもなんとかフルパワーでバンドに抜ける。そこからトラバースして最後がチムニー。これは荷物があると登れないので、荷揚げしてもらってから登った。

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◆独標ルート2P 40m? Ⅱ リード
ここは単なる山歩きである。ひたすら左上していくだけ。適当なところでピッチを切った。

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◆独標ルート3P 50m Ⅱ フォロー
ここも山歩き。Tロー君が少し左上したら今度は右上していく。

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◆独標ルート4P 50m Ⅱ リード
目の前にジェードルルートが見えてくる。最初の凹角と最後が少し悪いが難しくはない。ただ、岩が脆いので落石注意である。真っ直ぐ上がって右に少しトラバースしてジェードルルートの取付まで出た。

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2015.09.04-06摩利支天14

◆ジェードルルート1P 40m Ⅳ A1 フォロー
このピッチが地獄だった。極悪最凶、完全に風化した人口ルートは恐ろしいのひと言である。Tロー君が果敢にリードして、最初の濡れた凹角のところを人口で上がっていく。ここまでは前回来ていたようなので比較的順調に上がってテラスに出る。ただ、ここは結構厳しいところなので、ここで荷揚げをして荷物をテラスに固定していく。ここからTロー君の姿が見えなくなってしまうのだが、なかなかロープが出て行かない。テラスからしばらくはフリーとのこと。ちょっとずつだけどロープが出て行って、しばらくしたらハーケンを打つ音が聞こえてきた。で、また止まる。このルートは完全に野生化しているので、掃除をしながら登っているようだ。「うひょー、ハーケンあったー」なんて声が聞こえてくる。かなり手強いようだ。ビレイすること1時間半。「うおー」という歓喜の声が聞こえた後に「ビレイ解除」の声が聞こえてきた。正直自分もかなりホッとした。1時間半ビレイするのは精神的にしんどかった。
で、今度は自分がフォローで登っていく。おそらくこのピッチが今までで一番厳しいクライミングだった。最初の凹角を人口で登っているときに枝が折れて少しフォール。いきなり出鼻をくじかれた。この凹角は意外とちゃんとしたハーケンが残っている。ここは水の通り道になっていてビチョビチョなのだが、ハーケンがボロボロになっていないのは不思議である。この凹角部分も濡れていてかなり悪かった。テラスに出て荷物を背負って登っていく。ちょっとだけフリーなのだが、岩が脆くて恐ろしい事この上ない。フレークがまるごと剥がれるんじゃないかと思えるくらい脆い。フレークを超えると完全にフェースとなるのだが、これがもう意味不明。足場と思われた草付きを足で踏んでいくと、ごっそりなくなって単なるフェースとなってしまう。途中から人口に切り替えるも荷物が重くてもう大変。トラバースではハーケンが抜けて振られる。どうにも登ることができないのでスリングで固定しながら、ロープをごぼうしまくっていく。最後はかぶり気味の凹角。何度ロープにぶら下がったかわからない。このピッチ、濡れた岩に足を滑らせ、悪い草付きに手足を殺される。少しでも指にかかればいいのだが、まともなホールドはない。あぶみを使いたくても支点がない。クリフハンガーを使おうにも岩がもろくて弾かれてしまう。軽量化のためにユマールを置いてきたことを後悔するももう手遅れである。地獄のピッチを抜けて完全に心が折れた。最終ピッチは自分がリードするつもりでいたのだが、もう絶対無理。今の自分の力量ではこんなところはリードできない。Tロー君はホントに凄すぎます。

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2015.09.04-06摩利支天15

 

◆ジェードルルート2P 30m Ⅳ+ フォロー
Tロー君が引き続きリード。最初の悪いクラックを人口で越えていく。そこから姿が見えなくなってしまったが、ロープは比較的順調に出て行く。途中少し止まった後に「ロープ張り気味で」という声が聞こえてきた。ちょっと緊張したがすぐに「通常で」という声が聞こえてきて一安心。しばらくしたら「ヒョー」という歓喜の声が聞こえてきた。どうやら抜けたようである。この時点で自分もかなりホッとした。後は自分が上がってしまえば終わりである。こんな恐ろしいところは早く脱出したかったが、慌ててもしょうがない。荷物も重いしフォローといえども気は抜けない。最初の悪いクラックを超え凹角を上がっていく。凹角を詰めたら左のカンテに乗り上げてフェースを超えたら終了だった。前のピッチよりも簡単だったが、それでも最後はごぼうだった。

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2015.09.04-06摩利支天17

 

抜けたらすでに午後2時となっていた。この時点でバスは諦めた。ということでこの日は北沢峠まで。終了点からは砂場?のようなザレ場を登って行く。

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右の方から岩場を登り、最後はハイマツの藪を超えたら摩利支天峰に到着。トポには20分と書いてあったが、疲れもあってか1時間かかってしまった。下山して17時半に北沢峠に到着。日曜は雨予報になっているし、ツェルトしか持ってきてないので長衛小屋に泊まる。この日は摩利支天に登った興奮もあってビール、ハイボールを飲みまくった。

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翌朝バスで芦安に移動。風呂に入った後に帰宅した。

 

今回の独標~ジェードルルートはグレードじゃなかった。ひたすら悪いところをあらゆる手を使って登っていく。フリーの力があっても全く通用しないし、人口の技術だけでもない。まさに総合力を問われるルートだと思う。ただ面白いのが、悪いのは悪いのだが、それでも弱点をついているということである。今時こんなルートは流行らないのかもしれないが、だからこそ価値があるように思う。

 

■使用ギア
DMMナッツ #1~#8
マスターカム 1セット
キャメロット #1~#4
ハーケン
ボルトセット(未使用)

 

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