GW クラシックルート継続山行

K宮です。ゴールデンウィークで北穂高岳南稜と明神岳東稜からⅤ峰、そして一番こだわったⅤ峰南西尾根下降(3クラシックルート)を継続して来ました。この3年程、7月の3連休で奥穂高岳南稜、9月の3連休で明神岳東稜からⅤ峰南西尾根下降を計画してました。しかし、天候不良とパートナー調整がつかず断念、ならば比較的に天候の良いGWに一度にやっちゃおうと思うようになった。集会後の2次会の酒席で構想を発表、するとY岡さんが手を挙げてくれた。どう繋げたら面白いかと考えた。奥穂南稜が先か明神東稜が先か、流れとしては奥穂南稜が先の方が良いと判断。そこで思いついたのが、1、奥穂南稜から前穂を越え三本槍からA沢を下降し奥又白経由で、2、前穂北尾根を下降しパノラマコース経由で、3、奥穂・涸沢経由での明神東稜だった。結論が出ぬまま3月に、八ヶ岳東面のトレーニング山行に行った。そこで自分の体力と登攀力の衰えを痛感するとともに緊張感の維持に疑問符がつく、理想と現実は違う。考慮の結果、少し寂しいが3の継続とした。

 

山行日   4月29日(金)~5月3日(火)


ルート・コースタイム
29日(金)
 上高地バスターミナル(6:50)→明神橋往復→岳沢入口(8:35)→岳沢小屋(10:40)  ▲

30日(土) ▲(4:50)→南稜取付き(5:15~25)→トリコニーⅡ峰(9:50~10:00)→吊尾根/南稜の頭(11:50~12:05)→奥穂高岳山頂(12:15~30)→穂高岳山荘(13:15~30)→涸沢キャンプ場(14:25) ▲

01日(日) ▲(5:05)→ 横尾(7:00~35)→徳沢(8:25~40)~明神(9:25~10:00)→宮川のコル(11:30)→明神岳東稜末端/ひょうたん池(13:00) ▲

02日(月) ▲(3:40)→2660m地点(6:50)→小ピーク/2745m地点(7:30)→バットレス/1枚岩フェース基部(8:15)~上部(9:00~15)→明神岳Ⅰ峰山頂(9:30~45)→Ⅰ・Ⅱ峰のコル(9:55~10:05)→Ⅱ峰終了点(10:50~11:05)→Ⅳ峰(12:20~55)→Ⅴ峰→南西尾根上台地/2550m地点(14:25)▲

03日(火) ▲(5:15)→2230m地点(7:10)→1970m地点(7:35~45)→岳沢登山道(8:10~25)→上高地バスターミナル(9:20)


メンバー 
  (L)K宮   Y岡


総 重 量     K宮(20Kg)   Y岡(それ以上)

 

29日(金)

IMGP0278-1 IMGP0284-1
(河童橋から)                (岳沢小屋手前から岳沢上部を見る)

IMGP0285-1          IMGP0287-1
(岳沢小屋)                          (中央の沢/奥明神沢)

松本駅から新島々駅経由で上高地に入る。午前中の雨は覚悟していたが、幸い小雨で歩き初めてすぐに止んだ。河童橋からは岳沢上部の峰々がよく見えた。コブ尾根とトリコニーを確認する。間抜けな話だが、岳沢入口の標識を見落として明神橋まで行ってしまった。気を取り直して戻り岳沢小屋に向かう。小屋に近づく頃になると岳沢上部はガスに覆われた。岳沢小屋で手続きを済ませ一番乗りでテント設営する。

IMGP0288-1
(南稜取付き地点)

設営後、偵察に行くがトレースはない。一時的にガスがはれ全容は見えたけどすぐに覆われた。ガスが取れるのをしばらく待ったが駄目だった。南稜ルンゼ末端の小滝は見える。見に行くと登れそうな感じはする。しかし、見えないけどその上にも滝はある。登れても時間を要すると判断した。左の支尾根も偵察に行く。一旦ブッシュ帯に入るが南稜ルンゼの滝上に戻れるのではと推測された。結果、ルンゼ末端からの直上は止め、左からの支尾根に取付くことを選択した。

 

30日(土)

IMGP0290-1 IMGP0305-1 (今日は4パーティーが入った)        (南稜ルンゼ/見た目より急傾斜)

IMGP0309-1 1         IMGP0311-1 2
(1と2の写真は滝沢側に回りこんだ雪面で正規ルートでないと思われる。雪が少なかったので今回は抜けられたが、多いと雪庇が発達し通過不可か?)

IMGP0313-1          IMGP0316-1
(トリコニーⅠ峰1ピッチ目)        (トリコニーⅠ峰から左Ⅱ峰)

IMGP0322-1          IMGP0324-1
(Ⅱ峰直下、Ⅲ峰はルートから少し外れる)  (後続の2人パーティー)

IMGP0328-1          IMGP0330-1
(トリコニーⅢ峰から続く急斜面)      (もうすぐ吊尾根/南稜の頭)

テント撤収して南稜取付きに向かう。もう数名が先行している。天気良く、全容が把握できる。トリコニーまでのルートを目で追い記憶する。取付きは予定通り左の支尾根。短いブッシュ帯を抜けると雪面が上部に繋がっている。見た目より傾斜はあり雪面は締まっている。スリップは絶対に許されない。アイゼンの前爪が気持ちよく刺さる反面、脹脛が悲鳴を上げる。Ⅰ峰下のブッシュ帯基部に着く、そのままブッシュ帯を直上すればよかったが、判断ミスで滝沢側の雪面に入り込み正規ルートに戻るのに苦労した。雪が少なかったので事なきを得たが・・・ トリコニーⅠ峰の取付きでロープを出す。ここで後続の2人パーティーと合流する。この2人とは南稜の頭まで前後して攀じることになった。念の為にⅡ峰までスタカット。Ⅱ峰でロープをたたみⅢ峰を巻いて、後はひたすら雪壁・雪稜・岩稜を南稜の頭目指して登る。さすがのY岡さんも声がでる。私はルート中、常に声を発して気合を入れていた。左の方向に奥穂高岳が見えるとまもなく南稜の頭に到着。我々より先に着いた2人パーティーと記念撮影を取り合う。お互いの健闘を称えつつ雑談していると急に天候が悪化し始める。

IMGP0333-1          IMGP0335-1
(奥穂高岳山頂)                       (穂高岳山荘から)

IMGP0336-1 IMGP0340-1
(涸沢への下降)               (涸沢キャンプ場)

当初、彼らは奥穂・ジャンダルム経由で天狗沢の下降を考えていたようだが、天候の急変でルート変更し前穂経由で岳沢へ向かった。悪天下の吊尾根は厳しい行動を強いられるだろうが、話のやり取りから経験豊富な2人なので無事に岳沢に戻るだろう。我々は奥穂高岳経由で涸沢に向かう。山頂には登山者はおらずしばし達成感を満喫する。まだ20m程度の視界があるので迷うことなく穂高岳山荘下降点に着く。急な天候悪化の為に下降を急ぐ登山者がいる。上部雪面をクライムダウンし梯子を下りて穂高岳山荘へ、この下降は何度やっても緊張する。小屋の前には天候回復を待つ登山者がいる。小休止後、雪面を今日の目的地の涸沢キャンプ場に向かう。テント設営後まもなくの15時頃より風も強くなり小雪も降り出す。

 

01日(日)

IMGP0345-1 IMGP0349-1
(涸沢を後に横尾に向かう)          (徳沢キャンプ場)

IMGP0351-1 IMGP0358-1
(これから向かう明神岳東稜へのアプローチ)  (下宮川谷分岐/木の左の細いルンゼに入る)

IMGP0363-1 IMGP0362-1
(明神岳東稜テント場)            (明神岳東稜末端尾根)

起きると雪が20cm位積もっていた。今日は、横尾・明神橋経由で明神岳東稜末端の幕営地への移動。みぞれの中下降に入る。徳沢に着く頃には小雨も上がり晴れ間も見えてくる。明神で大休止をし、ひょうたん池目指しての登りに入る。雪はなく、踏み跡や目印があり問題なく宮川のコルまで行く。ここからは長七ノ頭を目指して行くがバテた。Y岡さんに遅れること5~10分位で幕営地に着く。尾根上部は濃いガスがかかっていて見えない。荒れているのか。30日の天候急変の為か数パーティーが時間切れで下山していった。

 

02日(月)

IMGP0369-1       IMGP0373-1
(第一階段を越えて)         (小ピークから見た前穂高岳)

IMGP0379-1       IMGP0375-1
(ラクダのコルとバットレス)     (小ピークから見た明神岳Ⅰ峰上部)

IMGP0381-1       IMGP0384-1
(一枚岩基部へのピッチ)       (バットレス)

IMGP0386-1     IMGP0391-1     IMGP0395-1
(一枚岩を攀じるY岡さん) (Ⅰ峰山頂から見た東稜)  (Ⅱ峰の登攀/Y岡さん)

2時起床、3時40分にヘッドライトを灯し早めに出発した。ゆっくりだが着実に高度を上げる。下のテントに明かりが灯っている。第一階段でロープを出し、そのままスタカットでしばらく登る。ラクダのコルから、またスタカットに切り替えた。一枚岩は雪は付いてなく正面から一歩右に出て凹角を登った。登攀終了後ロープをしまい、雪の腐りはじめた最後の雪壁をⅠ峰の山頂目指して喘ぎながら登る。途中Ⅱ峰を見ると先行パーティー2人が核心部を登攀していた。Ⅰ峰からガレを慎重に降りてⅡ峰とのコルに、ここでアンザイレンして2ピッチで抜ける。

IMGP0397-1 IMGP0399-1
(左からⅣ峰、中央Ⅴ峰、右Ⅲ峰)       (左手前 Ⅲ峰、中央Ⅱ峰、右Ⅰ峰)

IMGP0403-1 IMGP0405-1
(左Ⅳ峰、中央Ⅴ峰、南西尾根)        (Ⅴ峰北東面の上部)

IMGP0407-1   IMGP0408-1(南西尾根の幕営サイト/中央下)       (Ⅴ峰/中央付近を下ってきた)

IMGP0414-1 IMGP0421-1
(テントの中から/中央・焼岳)         (快適な幕営地と焼岳)

Ⅱ峰でⅤ峰までのルートを確認しガレを下降、Ⅲ峰は岳沢側をトラバース後に少し登り岩壁をクライムダウンと懸垂でおりた。Ⅲ峰はⅡ峰側とⅣ峰側からの景観はまるっきり違った。下方から見ると目立つ山頂である。Ⅳ峰は難なく通過、Ⅴ峰は山頂直下から南西方面の下降は長く、岩が積み重なっていて崩れそうで緊張した。Ⅴ峰を下り切った台地を今山行最後の幕営地とした。快適な幕営地でテント入口正面に焼岳、左には霞沢岳がどっしりとした容姿を見せている。明神岳東稜に入った他パーティーは、皆岳沢側の沢を下降していった。明日は最後の課題、南西尾根の下降である。残ったウイスキーを飲みながら2.5万分の1の地形図を広げまだ見ぬルートに思いをはせる。至福の一時でもある。

 

03日(火)

IMGP0430-1 IMGP0432-1
(南西尾根/上部)              (左2263.6m峰と上高地)

IMGP0438-1        IMGP0441-1
(南西尾根/下部)                    (ナイフリッジの下降)

IMGP0442-1       IMGP0447-1
(やせ尾根/悪い)          (岳沢に行く登山道に出る)

IMGP0449-1       IMGP0453-1
(遊歩道から)            (河童橋と奥穂高岳)

IMGP0456-1 IMGP0458-1
(明神岳Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ峰)            (バスターミナルから)

最終日、念願だった南西尾根の下降である。1988年か定かではないが、日々のトレーニング成果が出始めた頃である。パートナーと二人で3月に、慶応尾根から前穂北尾根経由で奥穂高岳そして涸沢岳西尾根下降に行った。その時にエスケープルートを捜していたらこのⅤ峰南西尾根を見つけた。当然、インターネットは無く、岳人か岩と雪かクライミングジャーナルだと思う。それ以来いつかは行きたいと思っていた。当時の南西尾根は入山者も少なく不明瞭でルートファイデングが難しいとの事だったと記憶している。今は、ネット普及により入山者が増えたようで踏み跡や目印も多かった。現に2パーティーの入山者がいた。でも、降雪直後や視界の悪いときの下降は迷うと思った。途中のやせ尾根も想定外だった。踏み跡や目印であっけなかったが、それでもフィナーレとして選んだ南西尾根は私にとっては最高だった。無事、登山道に出て上高地で記念撮影して今山行終了。5日間の長い山行だったが計画と天候が上手くマッチし完登出来た。

一つ一つのルートの難易度は低いが、繋げることでどう繋げるかの計画時の楽しさや、実際歩いての満足感、終わってから計画通り出来た達成感、トータルで面白い山行になったと思う。

計画立案はK宮だったが、登攀隊長とボッカ担当はY岡さんだった。共装のほとんどをY岡さんが担いでいたのに、それでもついて行けなかった。頼もしいパートナーである。

 

 

K宮    記

 

 

GW クラシックルート継続山行」への3件のフィードバック

  1. kいそ

    素晴らしい山行ですね。
    次はどんなプランを練っているのでしょうか?
    次回の報告を楽しみしています。

    返信
  2. 後続の2人パーティー(Y島)

    お察しの通り、厳しい行動を強いられました。やっとの思いで岳沢に戻ることが出来ました。

    5日間の素晴らしい山行記録を正座して読ませて頂きました。

    充実した山行だと思います。羨ましい限りです。

    又の山行報告を楽しみにしております。

    追伸 南陵での梅干しの振る舞い、ごちそうさまでした。

                       (Y島)

    返信
  3. K宮

    Y島さん、南稜ではお世話になりました。
    楽しい一時を共有でき嬉しく思ってます。
    厳冬期の山だと行くパターンが一緒で去年も会いましたねと言う事もあるけど
    5月はどうでしょう。また山で会いたいですね。
    同攀者のFさんによろしくお伝え下さい。

    返信

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