H田です。
9月9日(土)のアプローチを経て、9月10日(日)に錫杖岳の「見張り塔からずっと」というマルチピッチルートにトライしてきました。
メンバーはかみさん。
このルートのトライは2015年にアプローチだけしていました。
その時はK礒さんがいて、ご一緒するはずがバットコンディションで断念。
今回も本当は一緒に行きたかったのですが、私どもの老化のスピードから機を焦ってしまいトライしてしました。申し訳ありません。
そもそも会の月例山行が予定されていたのですが、参加者なく中止になり、どこへ行こうかと考えあぐねたのが発端でした。
9日はアプローチのみで、昼過ぎに駐車場着。当然満車と思われましたが、奇跡的に1台分の空きがありラッキー。
徒渉ポイントで石づたいできず、水量が多いことを予感させられました。
テント場は満員状態でしたが、迷わず前回と同じ錫杖沢に少し入った岩舎下を幕営地としました。
夕刻、やることもないのでビール飲んでぼんやりしていると上の方から手を振って寄ってくる人がいます。初めはよくわからなかったのですが、なんと元会員で今やバリバリクライマーとなったS木矢印さんと当会のY岡君でした。
錫杖前衛フェースの難しいルートをトライしていたようです。その表情が生き生きとしている様子から、充実のエンジョイができたことが見てとれました。うらやましい限りです。
若くて意欲があり、繰り返し挑む者に岩の神さまは試練とともにこの上ない喜びを授けてくれるものです。明日のトライもきっとエンジョイできることでしょう。
さて自分たちですが、夜明け前の頃に行動開始。
今日は長くなりそうな予感。
アプローチは以前よりさらに歩きやすくなっており、時間を稼いでくれました。
滝沢大滝の取付についた頃には、大人気ルート「注文の多い料理店」にはすでに取り付いているパーティーがいました。
陽はさしてきましたが、このあたりはしばらくは日陰のようです。大滝の水流がけっこうあることに先行きを慮りながらスタートしました。
相当上まで支点はありませんが、とても登りやすくプアでも要所には支点がとれました。
『新版日本の岩場』の岩場の記述は?ですが、自分のとったルートでまちがいないように思いました。3人の後続パーティーがきていて、このリーダーは何回かこのルートを登ったことがあるそうですが、私どもにぴったりついてきていたからです。
今回は終了点がはっきりしないであろうことを見越して60mロープをダブルで使用しました。
その見通しはあたって、2P目以降終了点はなく、いっぱいに伸ばした先で適当な支点を構築する必要がありました。
登るところは3P目は見事に濡れており、乾いたところをつないで登りました。その過程でルーファイが逸れたかもしれません。微妙なハーケンなどはあるもののラインとしては?で時々立ち止まっては考えることになりました。
クライミングとしてはⅢ~Ⅳ級ぐらいの登りですが、草付きもあって侮れません。このあたりは沢登りをやっている感覚でした。
自然の岩かカムで支点ができるところをつないで適当に登っていくと中央稜の上部に出ました。
まさにここが右俣沢に降りていく乗越のポイントで、大洞穴を始めとする本峰フェースがそそり立っているのをようやく目にすることができました。
中央稜乗越から下降気味にトラバースして右俣沢を直登すると大洞穴の直下に出ました。
大洞穴上部からは水が常にしたたり落ちており、壁はヌルヌルに湿っていて緊張しました。
よく観察すると下部のいくらか乾いたところをつないで登ってしまえば滑りの影響は少ないと思えてきました。そこでトライ。
要所にカムやナッツをきめ、中間部の木にたどり着いた時には魂が抜けそうになっていました。
サイズの良いハンドサイズクラックを登って、少し登ると中間の大テラス。
後続パーティーが追いついている気配がしました。
かみさんはノーフォールで回収もばっちりして登ってきてくれました。
後続パーティーはバットコンディションとみて降りてしまったようです。
続くピッチもなかなかで、怖いトラバースが待っています。
でも、フリースピリッツのウメボシ岩や先週のラピュタの塔でのトラバースを思うとどうということはないはずと果敢にトライ。
トラバースセクションはじわじわ行けましたが、直上となったところが思いの外悪かったです。一部濡れていたし。しくじったら大フォールまちがいなし。
ギリギリで登り切れました。グレードが1桁であることは間違いありませんが、失敗はできないルートであることも肝に銘じなくてはなりません。
終了点はなく、Ⅱ級ぐらいのスラブを随分上まで登って木でとりました。
かみさんはトラバースもそつなくこなし、ノーフォールで上がってきました。ちょっと頼りない終了点なので、ノーフォールはありがたかったです。
ようやく見えた本峰めざし、歩を進めます。
ぱっと見ではまだまだ遠そうに見えますが、他ルートからの先行者の声がピーク方向よりよく聞こえました。
岩の際をトラバースの後、コンテで草付きルンゼを登り、岩峰直下へ。
12時半頃にようやく錫杖岳頂上に達しました。
まがりなりにもオンサイトで各ピッチを登り切ったことになり、爽快な気持ちになりました。
雲が多めでしたが、景観もまずまず。
帰りが長いことを思い出し、写真を撮ったらすぐ下山にかかりました。
下山は正直長く感じました。
それでも比較的新しい赤テープや赤布に導かれ、迷うことなく南牧沢に降りることができました。
クライマーだけでなくハイグレードハイカーも訪れているようです。
目印がないと間違えそうなポイントが数カ所あったので要注意でした。
南牧沢は中央稜を左側に見送り、錫杖沢(歩きにくく、小滝の巻降りやクライムダウンも必要)になって北沢との分岐まで沢伝いに下降します。
ここまで来ると錫杖岩舎があって、踏み跡に戻れます。そこからはわずかで天場に到着しました。
天場に着いたのが16時頃。
やはり長い1日になりました。
撤収して、念のためにS木テントの場所を見に行くとまだ張ってあるのでわずかに心配しました。
メモを残していこうと用意していたらズンズンと降りてくるではないですか!
ロープがスタックして、回収に手間取り予想以上の労力を使ったとのこと。
たいへんではあったでしょうが、無事に戻ってこれた以上次につながる良い経験になったものと思います。良かった良かった。
今回も自分たちにはギリギリではありましたが、充実の山行になりました。
今回もかみさんには大感謝です。急に決めた計画なのによくついてきてくれました。
低グレードのロングフリーというより、本番の登攀に近いでしょうか。
バリバリ登る若者にはあまり勧められない気がしました。ただ悪くて寝ているルートとして悪態を吐くのが落ちであると思われるからです。
いろいろ登って落ち着いてきたらこういうのもイイかも。下山は長いけど。
「見張り塔からずっと」というのはボブ・ディランやジミ・ヘンドリックスの有名な楽曲名であることは後から知りました。
こうなってくると小川山の最奥にある「エレクトリック・レディランド」もトライしてみたいものです。
見張り塔からずっとオンサイトクライムおめでとうございます!
私にはもう手を出せるルートではないので、報告を楽しく読ませて頂きました。
造成したテンバも健在でビックリ!
機会があればキャンピングで訪れてみたいものです。
↑パーティも目標へ向かっているようで応援したいですねー!
エレクトリックレディランドいいですね〜〜
行ってみたい。
70′sRockとダートバック
いい響きです