2017年9月30日~10月1日
メンバー:S藤、D岸
春夏の山行はフリークライミングを中心としたものだった。それはそれでゲーム的な面白さがあったが、頂上を目指す山登りの魅力にも惹かれつつあった。でも普通の登りでは面白くない。バリエーション的な登りができたらいい。そう思っていろいろ調べてみると、「米子沢」という沢を知った。確か去年、誰かに誘われたけど、諸々の事情で流れたやつだ。しかも山頂へ向かって詰めあげている。ここにしよう。幸いなことにDさんも参加してくれた。
金曜夜、2人で登山口まで向かった。外は少し雨が降っていたようだが、明日は晴れるとのことで、早く寝る。
翌朝は快晴。百名山ということもあってか、車も多い。装備をまとめて出発。アプローチは駐車場下の橋の脇から入るとある。第3駐車場下の橋から作業道を進み入渓。広大な河原を歩く。ひどく荒れていた。ここら辺の天気が悪かった記憶はないのに。
水量は徐々に増していく。いよいよ「沢登り」という風になってきた。天気も快晴で、雲一つない。
しかし最高の青空とは別に、ここは米子なのかという疑問が徐々にわいてきた。遡行するにつれてそれは疑問から確信へと変わっていった。源頭間近でGPSを使って調べてみる。
「米子やないな」とDさんは言った。僕らは米子ではなく、米子の東側にある無名沢に入ってしまったようだった。でもさらに調べてみると、詰めあげた先の稜線には登山道が通っていて、そこから巻機山に抜けられるとのこと。「これも沢登りですよ」と笑って返した。
しかしそこからが悪戦苦闘であった。沢の水はほぼ見えず、巨大な石が沢を埋め尽くしているのみ。これからどうなるのか、「詰めが泥壁は嫌やなあ」などと話しているうちに、ようやく源頭へ着いた。詰めは泥壁ではなく藪である。それも優に背丈くらいはある藪だった。ハンノキ、笹その他・・・。相当傾斜があるので、ここでロープを出そうとDさんが提案した。
1P Dさんリード
傾斜がきつい上に、ザックが引っかかる。ザックともども、どうにか引っ張り上げてもらう。
2P S藤リード
傾斜はそこまでではないが、全身に木が突き刺さる。
ロープを出すのはここまでだったが、藪はまだ続く。ひたすら藪漕ぎを繰り返した。
ようやく稜線に出た。しかし登山道がない。調べたところ、廃道となっているようだ。しかしここまで来た以上、もう巻機山に向かって進むしかない。幸い天気は安定している。明日も天気は良い。「行くっきゃない」
登山道は完全に廃道となっていたようだ。腰から背丈ほどの藪をひたすら漕いでゆく。稜線や目指す山々は見えるのでどことなく安心感はあるが、この無限とも思える作業は辛かった。去年、Kさんと谷川岳でやったラッセルよりもさらにきつい。ようやく一つのピークについた。でも目指すピークはまだ先。しかも日もどんどん落ちてしまった。小屋までは行きたいと思っていたが、途中でビバークとした。「ホテル巻機」は笹藪の中ということもあり、風を防いでくれた。軽食を口に入れ、倒れこむように眠った。
しかし足が冷たい。上下ともに、切れるものは全て着たはずなのに。沢靴を脱がなかったからだろうか。
翌朝も快晴。昨日よりも天気は良い。巻機山もすぐそこだ。2時間あれば着くだろうと、再び「操業」しはじめる。アップダウンは少なくなり、景色を楽しむ余裕も生まれた。
ふと遠くを見ると、何かが動いている。前日は風でなびく木を鳥と間違えたりしたが、遠くにいるそれは人と確信できた。そしてそれと同じくらいのタイミングで、藪は草へと変わり、視界が広がった。
下山途中、何度も何度も後ろを振り返った。あまり回らない頭の中で「重厚な山にふさわしい重厚な登りだったな」という思いがぼんやり浮かんでいた。
渋い登りもまた良い経験だと思える遡行だった。
追記
米子沢のアプローチは第3駐車場の奥の堰からだった。つまり出だしから違っていたということ。他にも同じ間違いをしたパーティーがいるそうだ。
お疲れさまー!
色々な収穫があった山行ですねー
ルートファインディングは、単純なようで、なかなかどうして奥深いですよね。
コメコはいい沢なので、またチャレンジしてみてください!
日本の秋!!って感じですね。
写真もきれいで、ついつい見入ってしまいました!
ナイス!
またチャレンジしよう~
背丈以上の藪を漕ぎ、空を見上げると秋の空。
紅葉も美しく、清々しい思い出となりました。
合計9時間、藪こぎしたのは自身初めて…
今度は、本物のコメコを…