H田です。
10/11~12で、谷川岳幽ノ沢中央壁正面フェースルートをトライしてきました。
メンバーは私とかみさん。
侍の正式名のような厳つい名がついたルートへのトライは久しぶりです。
中央壁のほぼ真ん中を突き抜けるそれほど難しくはない人気ルートのようですが、ピンの少ない怖いルートであると定評のようです。
計画は10日ぐらい前に思い立ちました。
でも思いつきではありません。昨年の6月にアプローチをかけたものの取付の雪渓の悪さから断念していたからです。
ある意味思い入れのあるルートでした。
11日はアプローチのみとし、幽ノ沢取付部をベースとしました。時間もあるのでカールボーデン下あたりまで偵察しました。
ロープは持参しましたが使いませんでした。
カールボーデン下の滝の高巻きは悪く緊張しましたが、おかげで翌日は暗い中でも安心して進むことができました。
12日は4時40分頃出合を出発し、暗い中をヘッドランプをつけてアプローチしました。
取付までのアプローチはⅡ~Ⅲ級とのこと。
6時頃にやや広いテラスで身支度し、ロープをつけずに取付をめざしました。天候は上部がややガスった曇り空でした。
奥に見えている出っ張りが「とうふ岩」です。これまでもたくさんのクライマーがこの岩を目印に登ってきたのでしょう。
1P目は右の草付きを登りました。
そしてやってしまいました。終了点を見いだせず、登りすぎて謎の終了点でピッチを切るハメに。
フォローのかみさんに怪しいところを探ってもらうと笹藪の中にありました。
そこまで懸垂下降しましたが、さっそくのタイムロスです。
2P目はⅢ級ぐらいで、ノーピンながら快適でした。こんな登りが続けばいいなと思ったものです。
ところがまたしても終了点が見いだせません。
うっかり行き過ぎていっぱいになり、かみさんに前進してもらうハメに。もうダメダメですね。
ここまで途中2本だけランナーが取れました。ハーケンを打ったところも。
岩角を終了点とし、4P目の核心部をトライ。これが今までとうって変わったように適所にピンがあらわれ、ルート中最高に気分のよいフリークライミングを堪能できてしまいました。
部分的にはⅤ級ぐらいあるかもしれません。
このあたりから周辺の天候も秋空を回復しだし、展望も良く気分があがってきました。
ルートはやさしいスラブ登りでしたが、ピンはすこぶる少ないものでした。
ルート中盤の長い凹状スラブはハングで頭を押さえられ、右の凹角からリッジへ抜けます。
この凹角が要所で濡れており、難易度以上に緊張を強いられました。
リッジ上の終了点に達し、後はⅡ~Ⅲ級の草付きばかりと思い少しホッとしたのもつかの間でした。
ここからが精神的な核心で、草付き下にあるはずの終了点は跡形もありません。
わずかな踏み跡をたどって急な笹藪をたどりました。一瞬足ブラになるところもあり、その後の手のひらの疲労感から異常に握力を使ったものと思われます。
岩場にハーケン1本打ち込み、灌木で補強してかみさんを上げました。
かみさんには自信が持てずおたおたしている私を励ましてくれ、大いに助けられました。
そのワンポイントを抜けると傾斜は緩み、草付き帯を3P程かき分けて中央壁の頭に抜けることができました。13時半頃でした。遅い行動であったことがわかります。
そこからは一気に堅炭尾根を経て芝倉新道から国道、そして元の幽ノ沢取付まで下山しました。17時頃だったと思います。
芝倉新道は、誰がしているのか随所に整備の跡があり快適でした。
沢沿いの路の一部で崩壊しているところはありましたが、クライマーなら通行に問題はないでしょう。
ベースプラザ駐車場に着いたのは18時でさすがに真っ暗になっていました(18時でクローズなのでマチガ沢あたりから走りました)。
かえすがえすもよくいけたものだと思います。
かみさんの助けと登攀力がなければとてもただじゃすまなかったように思います。
終了点の見過ごしやライン取りの不手際は反省しきりです。まだまだ岩との対話が上手くできていません。
それでもクラシックルートを初見オールフリーで完登できたのは素直に嬉しいですね。
フリーで登れるところをアブミ等で人工登攀してしまうのはもったいないと思います。
支点や終了点に整備は必要かもしれませんが、増やす必要はないとも思いました。
秋の山懐に包まれ快適なクライミングができたのも、これまで会のみなさんに応援してもらったたまものと思い感謝するところです。
幽ノ沢で次のトライがあるとしたら、もう少し余裕を持った登りをしてみたいものです。
さすがですね!
これからも厚みのあるクライミングのお話をお聞かせください。